なぜ有機野菜だけではない? おだやかでカジュアルなオーガニックライフについて

無農薬だけに限定すると、りんごや洋梨はお届けできません。栄養価の高いブロッコリーはわたしたちも無農薬で栽培しておりますが、限られた週のみのお届けで虫の混入のリスクも高いのです。
はじめに
わたしたちは、自社農場を持ち無農薬栽培に取り組んでおります。また、有機JAS認証の生産工程管理責任者、有機JAS小分け業者(不要のため更新せず)も取得をしました。

有機JASでは認証機関に認められた内部規定の順守とその記録が求められます。これを人間に置き換えると、現代ではへその緒からも化学物質が検出されるなか、その汚染のない子宮で命が生まれてから、一切の化学物質にさらさずに育てるようなこと。


家庭内では殺虫剤である蚊取り線香や虫よけスプレーだけでなく、洗剤各種、化粧品など化学薬品が使われている製品は一切認められず、外出しても自分が行動する場所において、それらに汚染を避けることが必要で、汚染された時点で有機と認めらず、病気やケガにあっても化学薬品は一切使用できず、それらをすべて記録し監査を受ける。それほど厳しいものなのです。

農業の現場においては、病害虫発生時には一回の農薬も使用できずに全滅させてしまったり、途中まで成長した野菜をすべて耕うんしてしまい種を蒔きなおすこともよく聞きます。ほかには、豪雨後に殺菌剤が散布できず腐らせてしまったり、と制約のために大量のロスを生むことさえあり、その際はお届けできない事態も発生します。また、不足する栄養素を補うために適した有機肥料がない、または入手困難で高価であるため使用できずに、作物の成長を促せなかったこともあります。

 

農薬や化学肥料を一回でも使えばその時点から有機野菜でなくなり、その後その圃場では作られた野菜は3年間は有機野菜と呼べず、3年間の不使用を経て再度の有機認証が再取得できる仕組みなのです。

日本の農業の現状では、有機認証された農作物は総生産量に対して、野菜で0.46%、果実で0.09%、米ですらわずか0.1%という水準です。また、これからを担う50代以下の生産者は全体のわずか2割です。

わたしたちは、お届けする農産物がすべて無農薬であることが理想としつつも、この無農薬一択により、お届けできない品目や季節が生じたり、わずかな農薬の使用ながら農作物を健康に育て、抗酸化力など機能性成分が豊富な旬の野菜の栄養を享受できないことは健康にとってデメリットであると考えています。

たとえば、キャベツやブロッコリーを無農薬で生産するには非常にリスクが高いのですが、健康に寄与する機能性成分などが非常に高いことが知られています。これまで、わたしたちが基準を高めてこれらを供給できない場合には、会員のみなさまは一般のスーパーなどから購入するしかありませんでした。

そこで「第二の選択」として減農薬栽培を供給することで、誰が作ったのか確かな情報(適時、栽培記録表を確認し残留農薬検査を行い安全性を確認)と不足する栄養を手に入れることができ、多くの賛同を得てきました。また、わたしたちは無農薬を前提としながらも、農薬を使用したものを切り捨てるのではなく、農薬を使用しても「食べる人のことを想う生産者」とも提携を深めることができました。将来の人口減よりも早く生産者の減少が起きることを考えれば、こういった生産者もわたしたちに必要であることは間違いありません。

有機野菜を中心に減農薬やエコファーマー基準などを採用し、わずかな環境汚染はあるかもしれませんが、みなさまに支持を得られたことで、まさに生産者の心の支えとなり、生産現場では熱量があがり、それが味につながり、安心につながり、生産拡大の夢さえ沸き起こるなど、好循環が生まれてきました。

また、長年にわたり多くの消費者の方々の声に耳を傾けてきましたが、健康は化学物質を避けるだけで築き上げられるものではなく、ストレスの高い現代社会において、食選びについても、あれはダメ、これもダメ、と食の面でも安全性を気にするばかり、極度にストレスが高まったり、栄養バランスが崩れたり、さらにはオルトレキシア(不健康食拒食症)という症状になったりすることも懸念されます。

旬の野菜をバランスのよい食事に取り入れ、手料理を中心にすこやかで豊かな食卓を毎日続けることが優先されるべきです。ある程度の知識を持ったうえで、おおらかにその食べものが健康的であるかを判断し、偏りなく旬の野菜を取り入れた食生活をされている方々は、生産者を応援できている、環境にも貢献しているという実感とともに80代、90代になっても人生を楽しく元気に過ごしている方が多いのも事実です。

こんな食を作る人と食べる人の声から「おだやかでカジュアルなオーガニックライフ」というキーワードが生まれました。