有機農業の歩み
全有連(全国有機農法連絡会)の発足は、環境汚染が深刻な状況にまで拡がったバブル期の最中でした。バブル期の経済成長は環境衛生法や食品衛生法の伴わない経済発展で始まり、バブルにわいた日本列島は経済的に大きな恩恵を受けた人、反対に体調不良や過労で幸せな人生であるはずの一生を失しなった人など様々な社会問題が露呈した時でした。
食べ物や水質や大気が、何から何まで汚染が広がり、多くの人たちは健康障害の危機を感じ始めたころ、レーチェルカーソンの沈黙の春が世界中で話題になり、日本でも多くの人たちが有吉佐和子の複合汚染と共に読まれました。環境汚染と健康被害の因果関係についての研究者があらわれるなど、全有連も『食べ物とは、安心して食べられる安全な物でなければ、食べ物とは言えない』と、安全を掲げて誕生しました。
誰もが安心して食べられる安全な食べ物を生産し、みんなで健康を守ろうという原点からの発足です。幸い山形県の里山の集落、幸生地区の人たちは、家畜を飼い、キノコを栽培し複合型農業をこじんまり営む人たちが多くいました。この農家たちと協力しあい安心して食べられる野菜や米、果実を生産するところから全有連の産直活動が始まりました。そして間もなく日本各地でコツコツと有機農業を進める農家たちとの出会い、九州から北海道までの農家と共に有機農業を進める事になりました。
農産物の成長は桜前線と共に北上するもの、九州の農産物から始まり北海道の農産物までいつでも旬の野菜を会員の方々に周年お届けすることが出来るようになりました。その頃から3万平方メートルの自営農場が拓かれ、自らも有機農業に関わり、より安全で精度の高い無化学肥料、無農薬栽培に取り組み今日に至りました。この山形山農場は近隣の農地からも離れており有機農業には最も恵まれた環境にあります。
この30年の間、多くの農家や会員が一丸となって全有連を盛り立て、支えて下さったことに心から感謝を申し上げます。大震災がいくつも発生し、その都度、みなさんから暖かい義援金や物資を頂き被災者の方々にお届けする助け合いもありました。そして安心工房の設立や山形山静心荘の建設趣旨にも積極的にご賛同いただき、全有連と農家と会員さんと一体となって、人生のいちばん大事な健康は食からと云う大事業を成し遂げた30年でした。会員の方々とは兄妹や親戚のように交流もさせていただき、対話集会では共に学び、静心荘やニンジンさんでの懇親会では絆を深め、サクランボ狩りや紅葉狩り、農業体験、お味噌作り、竹の子掘りなどの楽しい思い出をたくさん創ることが出来た30年でした。
これからも、心と健康の交流は続きます。心と体が健康でさえあれば、いくつになっても、嬉しいことを求めれば、嬉しいことは自分の傍にやって来ると言います。これまでのご縁、今日のご縁を大事にしながら、より安心して食べて頂ける安全な食べ物を、全国の生産者たちと力を併せ『旬の野菜を、旬に食べよう』を合言葉に頑張ろうと思います。いちばん栄養価の高い旬の野菜を、しかも美味しい時期にみなさんにお届けいたします。専門家の分析でも旬の野菜と非旬の野菜では栄養価に大きな違いがあるようです。これからも健康第一に、今後の30年間もみなさんと共に楽しい人生を歩んで行きたいと願っております。
農場内には、会員の人たちと一緒につくった宿泊施設『静心荘』もあり、農業体験や自然観察、読書、音楽も楽しめる空間を持つ農場なので、多くの人が癒しに来てくれると嬉しい。